ゆきの工房・ノベルのイクシア・本編シリーズ:はじまり

ノベルのイクシア
本編シリーズ
はじまり
掲載日:2019/06/11
著者:黄金のラグナデーモン108世 様
とあるよく晴れた日の市街地。

2人の男が道端で談笑していた。


するとそこへ奇妙な格好の男が2人やって来た。
黒い覆面に同じ色のマフラー……

その姿はゲームにでも出てくる暗殺者等が近いだろうか。

他の街からやって来たのだろうか?
怪訝に思っていると、彼らは何事かを話し始めた。


会話の内容は聞こえなかったが、なんとなく興味を持っていると……




次の瞬間、銃声がこだました。

「え?」

あまりの事に思考が停止した。

ついさっきまで自分と話をしていた男の胸に穴が開き、赤黒い鮮血が飛び散ったのだから無理もない話だ。
わけもわからず天を仰いでいる被害者と加害者を見比べていると


「次はお前だ」


加害者が冷酷に告げた。


男は悲鳴を上げながら逃げ惑うが、間もなくその背中に風穴があいた。


「次を探すぞ」


それが彼がこの世で最後に聞いた言葉であった。






同じような凶行がこの街の至る所で起こっていた。

一方で一部の者は腹に一撃を入れられるなどして気絶はさせられたものの、命は無事であった。

彼らは一定の条件に従って殺害と捕縛を繰り返しているが、その事を知る者は張本人たちを除いてこの街にはいない。







この少し後の事


悲鳴と共に一人の女性が巨大な蛇に似た魔獣に丸呑みにされた。
皮も肉も瞬時に溶解したのか、口から出てきたのは魔獣の粘液と白骨だけだった。


「い……いやあああー!!!逃げないと……!!」


それを目の当たりにしたもう一人の女性はその場から逃げ出そうとした。
しかし反対側から別の魔獣が複数やってきた。


「あ……あぁ……!!」


恐怖でパニックとなった女性はそのまま動く事も出来ず、震えながら足下にアンモニアの水たまりを作った。

だが、それで魔獣達の気が変わる事は無い。

彼女は魔獣達に囲まれ、間も無く絶叫と共に彼らの胃に収まった。







「ほう……生存者か」

この街に住む並樹レイジとその妹のレミの前に現れたのは白衣を纏った老人であった。
その傍らには暗殺者のような格好の男が2人控えていた。



「あんた、のんびりしてないで逃げた方がいいぞ!そこら中魔獣だらけだ!」

「何も知らぬとは惨めなものじゃのう」

レイジの警告を受けても、老人は余裕の態度を崩さなかった。

「どういう意味だ!?」

その会話を遮るかのように今しがた出てきたレイジ達の家の裏口の扉を破ってサソリのような魔獣が出現した。

「ふむ、見せてやるか」

老人が右手をかざすと電光が走り、サソリの魔獣に直撃した。
魔獣はそれだけで煙を上げながら、ピクリとも動かなくなった。


「進化の核(エクスコア)を使い、超越者(イクシード)となる事で人間が会得する異能イクシア。我々エミニオンはこれを使い世界を掌握するつもりじゃ」

「エクス……コア?」


レイジはあまりにも聞きなれない単語の連続に頭の処理が追い付かなかった。


「天然の進化の核は貴重での。エミニオンは人工の進化の核を作り、ワシはさらにその質の向上を目指しておるのじゃ。今日はその研究の為にこうしてワシ自らここに実験体となる人間の調達に来たのじゃ」


実験体……調達……
その2つの単語(ピース)に混乱しかけたレイジの頭が急に冴え渡った。


「まさか……この騒ぎは……」

「この街も、そこに巣食うゴミ共もこのオグマ様の偉大なる研究のために使われて本望じゃろうて」


オグマと名乗った老人が笑いだす。
その姿はレイジ達の目にはどんな魔獣よりも醜悪な化け物に映った。

すると、何か機械のような物を見ていた男が声を上げた。


「オグマ様!この2人に反応が!」

「ほう、お前達も運が良いようじゃな。ワシの実験に使われる事、踊り狂って喜ぶがいい」


どんな実験だか知らないが、こんな奴の思い通りになる気はない。


「ふざけるな!レミ、逃げろ!!」

レイジがオグマに向かって勢いよく走りだす。
しかし、その突進はオグマの手から発した雷光の一撃によって中断させられる。


レイジは叫びを上げる事も出来ぬほどの激痛と共に吹き飛ばされ、地面を転がった。


「お兄ちゃん!!しっかりして!!」

傷つき倒れた兄にレミが駆け寄り、涙目になって呼び掛ける。
その体には火傷と裂傷が無数に刻み込まれ、地面に赤黒い池を作り上げていた。


「ふむ。うっかり手を出してしまった。まあ良い、そこの娘を連れて帰るぞ」

「はっ!」


オグマの部下2人が兄の身を案じるレミの両腕を掴み、強引に引きずって行く。


「お兄ちゃん!お兄ちゃん!!お兄ちゃーん!!」


レミは涙を流して必至に叫び、トレードマークのツインテールを振り乱しながら抵抗するが大の男2人の力に勝てるわけもなかった。




(ちくしょう……レミ……!!俺に……力があれば……!!)





……これが世界の存亡をかけた戦いのプロローグである事を知る者はまだ誰もいない。