ゆきの工房・ノベルのイクシア・本編シリーズ:意外なる救援者
ノベルのイクシア
本編シリーズ
意外なる救援者
見た瞬間に否が応でも悟らされた。
ああ、こいつはまさに絶望そのものだ。
人も、超越者も、魔獣さえもこいつの前では無に等しいと断言できる。
レイジは今ここへ来た事を心から後悔していた。
形ある絶望が腕を振り上げ、叩きつけようとしてくる。
確実に殺される。原形も留めぬ程潰され、真紅の染みとなる。
4人全員がそう確信した時、地面が消えるような感覚と共に視界が黒一色に塗りつぶされていた。
黒が消え失せ、地面に触れている感覚が戻ると、絶対なる絶望の化身は影も形も無かった。
霧や周囲の景色から絶望の街から出たわけではなさそうだが……
「何が起こったんだ……?」
レイジが呟く。
カレンも同意見だといいたげだ。
「どうやら転移させられたようです」
「だが、助かったと考えるのは早いと思うぞ」
銃を構えながらクウヤが言う。
確かに転移させた者の真意が不明だ。
レイジも立ち上がりながら腰の刀に手をかける。
「そう構える必要は無くてよ」
背後から声がしたので振り向くと、この場にはあまりにも不釣り合いな格好の一人の女性がやって来た。
その金色の髪も相まって童話の主人公のコスプレにしか見えない格好である。
「私はアリス。エミニオンの四天王の一人と言った方がわかりやすいでしょうね」
名前の後に続いた言葉を聞いた瞬間、一斉に武器や拳を構える。
「構える必要は無いと言ったはずよ」
「ならどうして俺達を転移させた?」
「最新情報を教えようと思ってね。残りの魔石の場所、知りたいでしょ?」
「なんだと?」
驚くクウヤを尻目に、小馬鹿にしたような笑みを浮かべてアリスは続けた。
「まずは闇の魔石。これはこの街の奥にある教会、その更に奥の懺悔の洞窟にあるわ」
「……あれがいる限りどうしようもないぞ。倒す方法でも知ってるのか?」
「倒すのは不可能でしょうけど、あいつは自分が発生させた霧で獲物の動きを感知してるの。霧が濃くなった時に動きさえしなければ大丈夫よ」
「なるほど」
「そして、光の魔石は封魔の遺跡にあるわ」
「封魔の遺跡!?」
「どうやら知っているようね。私から伝える情報はそれだけよ」
「待て」
立ち去ろうとするアリスをクウヤが呼び止める。
「何かしら」
「お前が俺達を助ける理由はなんだ?」
「簡単よ。私が楽しむため。ただそれだけ。せっかくエミニオンと戦える面白い人たちが現れたのに、白き絶望(アークリッチ)に横取りされるなんて面白くないもの」
「……」
「ただ助けるのはこれが最後と思いなさい。それじゃあね」
「助けてくれてありがとう。感謝する」
「律儀な人間ね……私は自分の目的で動いてるだけ。感謝する必要はないわ」
しかしアリスは言葉とは裏腹にまんざらでもなさそうな笑みを浮かべる。
「まあ、私の期待に応える事が恩返しになると思いなさい。では……ごきげんよう」
そう言ってアリスの姿は闇の穴―――そう表現するしかない空間に消えて行った。
ああ、こいつはまさに絶望そのものだ。
人も、超越者も、魔獣さえもこいつの前では無に等しいと断言できる。
レイジは今ここへ来た事を心から後悔していた。
形ある絶望が腕を振り上げ、叩きつけようとしてくる。
確実に殺される。原形も留めぬ程潰され、真紅の染みとなる。
4人全員がそう確信した時、地面が消えるような感覚と共に視界が黒一色に塗りつぶされていた。
黒が消え失せ、地面に触れている感覚が戻ると、絶対なる絶望の化身は影も形も無かった。
霧や周囲の景色から絶望の街から出たわけではなさそうだが……
「何が起こったんだ……?」
レイジが呟く。
カレンも同意見だといいたげだ。
「どうやら転移させられたようです」
「だが、助かったと考えるのは早いと思うぞ」
銃を構えながらクウヤが言う。
確かに転移させた者の真意が不明だ。
レイジも立ち上がりながら腰の刀に手をかける。
「そう構える必要は無くてよ」
背後から声がしたので振り向くと、この場にはあまりにも不釣り合いな格好の一人の女性がやって来た。
その金色の髪も相まって童話の主人公のコスプレにしか見えない格好である。
「私はアリス。エミニオンの四天王の一人と言った方がわかりやすいでしょうね」
名前の後に続いた言葉を聞いた瞬間、一斉に武器や拳を構える。
「構える必要は無いと言ったはずよ」
「ならどうして俺達を転移させた?」
「最新情報を教えようと思ってね。残りの魔石の場所、知りたいでしょ?」
「なんだと?」
驚くクウヤを尻目に、小馬鹿にしたような笑みを浮かべてアリスは続けた。
「まずは闇の魔石。これはこの街の奥にある教会、その更に奥の懺悔の洞窟にあるわ」
「……あれがいる限りどうしようもないぞ。倒す方法でも知ってるのか?」
「倒すのは不可能でしょうけど、あいつは自分が発生させた霧で獲物の動きを感知してるの。霧が濃くなった時に動きさえしなければ大丈夫よ」
「なるほど」
「そして、光の魔石は封魔の遺跡にあるわ」
「封魔の遺跡!?」
「どうやら知っているようね。私から伝える情報はそれだけよ」
「待て」
立ち去ろうとするアリスをクウヤが呼び止める。
「何かしら」
「お前が俺達を助ける理由はなんだ?」
「簡単よ。私が楽しむため。ただそれだけ。せっかくエミニオンと戦える面白い人たちが現れたのに、白き絶望(アークリッチ)に横取りされるなんて面白くないもの」
「……」
「ただ助けるのはこれが最後と思いなさい。それじゃあね」
「助けてくれてありがとう。感謝する」
「律儀な人間ね……私は自分の目的で動いてるだけ。感謝する必要はないわ」
しかしアリスは言葉とは裏腹にまんざらでもなさそうな笑みを浮かべる。
「まあ、私の期待に応える事が恩返しになると思いなさい。では……ごきげんよう」
そう言ってアリスの姿は闇の穴―――そう表現するしかない空間に消えて行った。