ゆきの工房・ノベルのイクシア・Hシリーズ:二人のクリスマス
ノベルのイクシア
Hシリーズ
二人のクリスマス
「綺麗ですねぇ……」
冷え切った空気の中、サヤが感嘆の思いを白い息と共に吐きだす。
今日は12月24日。
言わずと知れたクリスマスイブである。
サヤの言う通り、クリスマスシーズンということで辺りはイルミネーションで煌びやかに彩られている。
すっかり見慣れた筈のアークシティの街並みが、今の2人にはまるで別世界のように感じられた。
「ああ……そうだな」
「こんな綺麗な中をレイジさんと歩けるなんて……嬉しいです」
「俺もだよ」
その別世界の中を二人は手を繋いで歩いていた。
レイジの右手と繋がったサヤの左手には2つの指輪が嵌められている。
1つはかつてレイジがルミナスタウンで買い求め、彼女に贈った結婚指輪。
1つは忘れ得ぬ思い出の証たるカウンターリングである。
「思えばこうして二人で出歩くのも久しぶりですね。最近レイジさん、お一人でどこかへ出かけてばかりでしたから」
「悪い悪い。どうしても外せない用事があってな」
「責めているわけじゃないですよ」
「そう言えば、サヤはどんなクリスマスを過ごしてたんだ?」
「普段と変わらず修行や戦いでした」
「そうか……退魔士の家に休みは無いんだな」
「お正月くらいしか例外は無かったと思います」
「じゃあ今日は盛大に楽しまないとな」
「はい!」
今夜はいつもの8人でクリスマスパーティーをすることになっている。
そこで前もって注文したクリスマスケーキを受け取りがてら、街を散歩することになったのだ。
ただの散歩のはずなのに、二人の胸は温かな幸福感で満たされていた。
自分たちと同じようなカップルの姿が目に入った。
よく見ると、女性の方の腹が丸く膨らんでいた。
「はやくプレゼントかいにいこうよー」
「プレゼントは逃げませんよ」
次に子連れの母親らしき女性がやって来た。
「俺にもああいう頃があったんだよな……」
「いつか……私達もああいう日を迎えることになるのでしょうか?」
「そうだな」
「私……楽しみです。レイジさんの子供を見る日が」
サヤは屈託の無い笑みで言った。
東地区にある公園には10メートルはある大きなもみの木が立っていた。
魔の樹海の大樹や風の渓谷の塔に比べれば劣るとはいえ、間近で見ると圧巻である。
その大きさに見合ったサイズの様々なオーナメントで飾りだてられたその木に、二人はしばし無言で見入っていた。
「……そろそろ目的を果たしに行こうか」
「そうですね。あまりケーキが遅くなると、皆さんに申し訳ないですし」
街の南西にある雑貨屋ヒナギクの前では寒そうなサンタ衣装に身を包んだ売り子が必死に作った営業スマイルを浮かべて背後に山積みにされたケーキの箱を売り込んでいた。
「珍しいですね。レイジさんが可愛い娘を見て何の反応も示さないなんて」
店内に入るや、そんなことを言い出した。
「今日ぐらいは目移りしないさ」
「……それって、明日からはいつも通りってことですか?」
「いや……それは……」
「ふふっ、冗談です」
店でケーキを受け取り、外へ出ると雪がぱらつきだした。
「ホワイトクリスマスだな」
「懐かしいですね……雪……」
世界の壁を越え、奇跡の再会を果たしたあの日。
思えばあの日も雪が降っていた。
二人にとって雪は別れと再会の象徴である。
「サヤ……」
「はい?」
「少し目を瞑っててくれないか?」
「いいですけど」
レイジの意図を掴めないながらもサヤは素直に指示に従った。
「いいよ」
「レイジさん……いったい何を……」
「下を見てごらん」
「下?……あ!」
レイジに言われるまま下を見たサヤの目が大きく開いた。
そこには雪の結晶を模したシルバーのネックレスが光っていた。
レイジがこの日の為にアークシティのアクセサリーショップで購入したものだ。
「結構の値の張る代物だったけど、ここ最近各地で魔獣を倒して稼いだお陰でどうにか買う事が出来たよ」
「これを買うために最近出かけてたんですね……」
「気に入ってもらえたかな?俺のクリスマスプレゼント」
「勿論です!それに、最初のクリスマスプレゼントがレイジさんからで本当に良かったです!!」
「そう言ってくれると、頑張った甲斐があるよ」
探偵事務所に帰る頃には雪は本降りになり、家路を急ぐ人々の姿も多く見かけるようになった。
「ただいまー……あれ?」
服に着いた雪を払いながら、レイジは怪訝な声を上げた。
ケーキを待っているはずのクウヤ達6人の姿はどこにもなく、無人の屋内を来客用のガラステーブルの上に置かれた家庭用小型ツリーの灯りだけが照らしていた。
「皆さんどこへ行かれたんでしょう?」
自分達にサプライズでも仕掛けようと隠れているのかと思ったが、電気をつけても誰一人出てこず、1階のどこを探してもクウヤ達の姿は見当たらなかった。
「おかしいな……みんなどこ行っちゃったんだろう?」
2階へ上がっても、同じであった。
しかし食事用テーブルの上に出かける時には無かった筈の小箱とICレコーダー、ラップに包まれた料理とキャンドルが置かれていた。
「なんだろうこの箱……」
白い雪の結晶の模様が描かれた箱の蓋をレイジが開けると、精巧に作られた銀の人形が5つせり上がり、クリスマスソングを奏で始めた。
「これは……オルゴールか……」
「いい音色ですね……」
人形は全て女性を象っており、手には楽譜らしきものを持っている。
ルミナスタウンの聖歌隊がモデルだろうか?
「真ん中の……ルナさんにそっくりですね」
「言われてみれば確かに……」
ショートの髪、頭頂部のγ(ガンマ)の字にも似たくせっ毛、豊満な胸……全てルナと一致していた。
曲が終わると自動的に人形が下がっていき、蓋も閉じた。
「こっちのレコーダーは何でしょうか?」
サヤがおもむろにレコーダーを手に取り、再生ボタンを押す。
「メリークリスマス!レイジ!サヤ!」
聞き慣れたカレンの声がレコーダーから響いた。
「にっひっひ。どう?驚いた?」
「そこの箱はお兄ちゃんとサヤさんのためにみんなでお金を出し合って……」
「ルミナスタウンに住んでる私の知り合いの技師に特注した二人へのプレゼントよ」
「とんでもなく値が張ったけどな」
「サヤ、この兄と皆からの贈り物。気に入ってくれると幸いだ」
「私達はルミナスタウンのルナの家で楽しむとするわ。そこにいたら熱くて熱中症になっちゃいそうだし」
カレン、レミ、ルナ、クウヤ、カイ、リナの順番でそれぞれの声が思い思いのメッセージを紡ぐ。
「本当はクリスマスキャンドルは着けていこうかと思ったんだが、万一事務所が火事になると困るんでな。すまんがセルフで勘弁してくれ」
このクウヤの言葉で、キャンドルの傍に安物のライターが置かれていることに気づいた。
「まったく……粋なことをしてくれるよ」
そう零したレイジがライターを取ろうとすると足に何かが当たり、紙がクシャッとなる音が鳴った。
足元を見るとリボンが巻かれた紙袋が置かれていた。
「なんだこれ?」
袋を開けると、そこにはかつて戦いの中で手に入れたヤドリギの名を持つ銃が入っていた。
「にひひっ!ここからは私だけのサプライズ!」
止めるのを忘れていたICレコーダーから突如カレンの声が発せられた。
「足元にある袋はみんなには内緒で二人に用意しておいたのよ。ヤドリギの代わりに使ってね。言っとくけど貸しただけだからね。明日にはちゃんと返してよね。約束よ?」
そこでピー、と電子音が鳴り、今度こそ音声は途切れた事を告げた。
「……ヤドリギの代わりってどういう事でしょう?レイジさん、わかりますか?」
「ヤドリギの下でキスをすると永遠に愛が続くっていう伝説があるんだよ」
刹那、サヤがぼんっと顔を真っ赤にした。
「ま、まったくカレンの奴……気が利くんだかおせっかいなんだかわからないな……」
「そ、そうですね……」
ケーキの箱を開け、中身を取り出した。
中央には『Merry Christmas』と記されたチョコのプレートと砂糖菓子の人形が2つ配置されていた。
かなりデフォルメされてはいたが、その姿形は紛れもなく……
「これは……私とレイジさん……ですか?」
「写真を見せればそれをモデルにした飾りを作ってくれるサービスがあったからやってもらったんだ。追加料金が発生したけど」
その後ライターで灯したキャンドルの明かりが照らす中、再びオルゴールに一曲奏でてもらいながら二人きりのクリスマスディナーを満喫した。
ケーキは元々8人で切り分けることを想定したサイズだったので、半分以上を残すことになり冷蔵庫で保管することになった。
プレートと2つの砂糖菓子はしっかり腹に収めたが。
「ふぅ……お腹いっぱいです……」
「サヤ、今日はよく食べたな」
「だ、だって美味しかったんですもの……」
顔をほのかに染めつつ、口をとがらせながら言う。
想い人のそんな愛らしい様にレイジの口元が緩んだ。
「レミがいつも以上に腕を振るってくれたんだろうな。帰ってきたらよくお礼を言わなくちゃな」
「そうですね……レイジさん?」
不意に顔を近づけてきた最愛の男に怪訝な声を漏らすサヤ。
「その……甘いキスがしたくなったもので……」
「もう……」
その行動の理由に照れながら嘆息すると……
「部屋で待っていてくれませんか?少し準備しますので」
自室へ持ってきたキャンドルの明かりの中、レイジはサヤの不可解な要求に訝りつつもベッドに腰を掛け、彼女を待った。
「お待たせしました、レイジさん」
「サヤ、一体どうし……」
声に反応し、入口の方を向いたレイジは言葉を失った。
縁に雪のように白くふわふわの毛を持つ布面積の少ない水着に身を包んだ想い人の姿を目の当たりにしたからだ。
サンタビキニを着用したサヤは右手に白いビニール袋を持っていた。
ちょうどサンタの担いでいるプレゼントの袋のように。
「サ、サヤ!?その恰好は!!?」
「……レイジさんもよく行ってるオトナのお店で買ったんです」
「え……!?あの店に入ったのか!!?」
サヤが絶対に足を踏み入れないであろう場所に行っていたという事実に驚愕するレイジ。
「前々から気になって……入ってみたら……その……」
「そ、そうか……」
「そして……」
サヤは言葉を切り、ビニール袋から何かの小瓶を取り出し、中身を一気に飲み干した。
するといつかのようにみるみるサヤの乳房が膨らんでいった。
ビキニの胸紐が今にもはち切れそうな程に伸びるが、かなり丈夫な素材で出来ているようでその心配はなさそうだ。
切れたら切れたでレイジにとってはおいしいシチュエーションなのだが。
「それ……もしかして豊胸剤?」
「レイジさんは大きいのがお好きなんですよね?これは私からのクリスマスプレゼントです」
そう言って、サヤはビニール袋を枕元に置いた後2つの大きな膨らみをレイジの胸へと押し付けた。
「今日はレイジさんの喜ぶこと……たくさんしようって決めてたんです」
「サヤ……俺の為にこんな寒そうな格好を……」
「レイジさんの為なら、寒さなんて平気です。それに……」
そこで再び言葉を切り
「これから一杯……温かくしてくれますよね?」
照れ交じりのその発言を聞くや否や、レイジは飛びつくようにキスをした。
ケーキの甘い味がする、この聖なる夜ならではのキスを。
「んむ……ちゅ……」
「あむ……レイジ……さん……」
同時に彼女を強く抱き寄せ、その膨らみの感触も堪能する。
二人の舌と唾液が交じり合うまで、そう時は要しなかった。
やがて苦しくなると最初のキスの時と同様、銀の糸を引きながら口を離す。
「……来年はチョコレートケーキを買って、チョコ味のキスをしてみないか?」
「ふふふ……もう、レイジさんったら……気が早すぎますよ。その案には賛成しますけど」
もう一度唇を重ね、舌と唾液を絡ませる。
そのままサヤを下にしてベッドの上へなだれ込む。
「あ!レイジさん……」
サヤが止める間もなく、レイジはブラに当たる部分をずらし、膨らんだ乳房を露にする。
そして最愛の女性からのクリスマスプレゼントにキスをする。
顔面でその柔らかさを味わうのも忘れてはいない。
「もう……そんなところに……」
「せっかくのサヤからのプレゼントなんだ。存分に味わわなきゃ。みんなには気づかれない位置にしておくからさ」
サヤの抗議を無視して、次々と柔らかな双丘に唇の刻印がなされる。
深い谷間には贈られたばかりのネックレスが静かに煌めいていた。
「レイジさん……胸もいいですけど……そろそろ……」
起き上がって枕元からビニール袋から別の小瓶とストローの紙包みを取り出し、紙包みをレイジに渡す。
「その瓶は?」
「真・馬並みドリンクだそうです。このビキニを買ったとき、おまけしてもらいました」
ラベルの効能書きによると以前使ったサウザンド程ではないが、精力を増進させる効果があるらしい。
「これを……こうして……」
蓋を開け、大きな胸の谷間に挟むサヤ。
「この状態で飲んでくれませんか?」
レイジから細長い紙包みを取り、中身を取り出して瓶に刺す。
(これ……結構興奮するな……)
言われるまま、レイジはジュース感覚で中身を吸っていった。
豊満な乳房が若干顔に当たっていた。
想い人からの思わぬ趣向を堪能していると、程なく元々勃起していたレイジのペニスが更にムクムクと膨らんでいった。
普段よりは大きいが、過去の馬並みドリンクシリーズを服用したときに比べるとだいぶ小さい。
「その大きさなら私の中に入れても大丈夫そうですね」
「サヤ……実は結構この状況を楽しんでないか?」
「ダメ……ですか?」
「まさか」
そう言ってレイジはサヤの股間にゆっくりと勃起を収める。
そして大きな双丘に両手を付いて鷲掴みにする。
「やっぱり大きいおっぱいは手で掴むに限るなぁ」
「もう……レイジさんたら……」
「安心して。こっちの方もしっかりとやるから」
言葉通りレイジは腰を動かし、サヤの膣内を抉りだした。
「あんっ!今日のっ……レイジさんっ……いつもよりっ!!」
「ドリンクのお陰もあるけど……今日は気持ちが最高に高ぶってるからなぁ……」
「わ、私も……で、でも……こんなの……気持ちよすぎて……私……」
「そうだな……今日のサヤいつもより吸い付きがいいから……早く……終わりそうだ」
狭い部屋に喘ぎと水音が響く。
「レイジさんの……おちんちんがぁ……私の子宮の入り口と……キスしてますぅ……」
「随分エッチな言い回しをするじゃないか……そんなサヤには……ご褒美をあげよう」
そう告げて、レイジは彼女の乳首に顔を寄せ口づけをする。
「やぁん……レイジさんたらぁ……!!」
サヤが艶やかな抗議の声を上げるが、レイジは更に乳首を口に含みコリコリとした感触を味わいだした。
サヤが買ってきた品の効果だけでなく、今日というこの日がもたらす独特な雰囲気が情事をより熱く、より激しく、より上質なものへと昇華させていった。
間もなく二人は本能的に情事の終わりを悟った。
「はぁん、レイジさ……私……もう……」
「俺も……もうすぐ……イきそうだ……!!」
「だ……出してくださいっ!!レイジさんのっ!!私の中にっ!!」
「ああ。言われなくても……サヤの為にもな!!」
いつか自分の子供を見たいというサヤの願いが叶うよう思いを込めて精を解放した。
無論、それは彼自身の願いでもある。
白濁の放出が終わると同時にレイジの逸物が元の大きさに戻ったが、彼の昂ぶりはまだ収まり切ってはいなかった。
「はぁ……はぁ……まだ……物足りないようですね?」
「うん……」
「いいですよ……レイジさんがしたいのなら……でも……」
言いながら、サヤが枕元に置いたビニール袋に手を伸ばす。
「レイジさん……実はもう1つプレゼントがあるんです」
ビニール袋から雪のように白く、長く、そして柔らかなものが姿を現した。
「これは……マフラー?」
「はい……こういうのは初めてだったんですけど、レミさんに手伝ってもらって作ったんです」
「ありがとう」
レイジは受け取ったマフラーを早速巻いてみた。
刹那、サヤに抱きしめられているような錯覚を覚えた。
「とってもあったかいよ」
「気に入ってもらえて、嬉しいです」
サヤが今日の中で、一番満足げな笑みを浮かべた。
「……なんだかもらってばかりで悪いな」
「いいんです。私にとってはレイジさんが一緒にクリスマスを過ごしてくれる、その事に勝るクリスマスプレゼントなんてありませんから」
「はは……こりゃ参ったな」
レイジが照れながら右手を後頭部にやると不意にサヤが抱き着いてきた。
「もう一度キス……してくれませんか?」
「じゃあせっかくだから、こいつの下でするか」
レイジはカレンからの借り物……ヤドリギの名を持つ銃を右手で高く持ち上げつつ、覆いかぶさるように唇を重ねた。
もう二度と離れることが無いように、言い伝え通り永遠に愛が続くよう願いを込めて。
「さっき、最初のクリスマスプレゼントがレイジさんからで本当に良かったって言いましたけど……それと同時に最初にプレゼントを贈る相手がレイジさんで本当に良かったとも思ってますよ」
「サヤにそんな風に想ってもらえること……俺にとってはそれが最高のプレゼントだよ」
「ふふっ、愛してます。レイジさん」
「愛してるよサヤ。メリークリスマス」
再びピストンを開始され、喘ぎと水音が響きだした。
こうして二人が結ばれてから最初に迎えたクリスマスは閉幕となるのであった。
なお余ったケーキは翌日に帰ってきた6人の胃に無事収まったことを記しておく。
冷え切った空気の中、サヤが感嘆の思いを白い息と共に吐きだす。
今日は12月24日。
言わずと知れたクリスマスイブである。
サヤの言う通り、クリスマスシーズンということで辺りはイルミネーションで煌びやかに彩られている。
すっかり見慣れた筈のアークシティの街並みが、今の2人にはまるで別世界のように感じられた。
「ああ……そうだな」
「こんな綺麗な中をレイジさんと歩けるなんて……嬉しいです」
「俺もだよ」
その別世界の中を二人は手を繋いで歩いていた。
レイジの右手と繋がったサヤの左手には2つの指輪が嵌められている。
1つはかつてレイジがルミナスタウンで買い求め、彼女に贈った結婚指輪。
1つは忘れ得ぬ思い出の証たるカウンターリングである。
「思えばこうして二人で出歩くのも久しぶりですね。最近レイジさん、お一人でどこかへ出かけてばかりでしたから」
「悪い悪い。どうしても外せない用事があってな」
「責めているわけじゃないですよ」
「そう言えば、サヤはどんなクリスマスを過ごしてたんだ?」
「普段と変わらず修行や戦いでした」
「そうか……退魔士の家に休みは無いんだな」
「お正月くらいしか例外は無かったと思います」
「じゃあ今日は盛大に楽しまないとな」
「はい!」
今夜はいつもの8人でクリスマスパーティーをすることになっている。
そこで前もって注文したクリスマスケーキを受け取りがてら、街を散歩することになったのだ。
ただの散歩のはずなのに、二人の胸は温かな幸福感で満たされていた。
自分たちと同じようなカップルの姿が目に入った。
よく見ると、女性の方の腹が丸く膨らんでいた。
「はやくプレゼントかいにいこうよー」
「プレゼントは逃げませんよ」
次に子連れの母親らしき女性がやって来た。
「俺にもああいう頃があったんだよな……」
「いつか……私達もああいう日を迎えることになるのでしょうか?」
「そうだな」
「私……楽しみです。レイジさんの子供を見る日が」
サヤは屈託の無い笑みで言った。
東地区にある公園には10メートルはある大きなもみの木が立っていた。
魔の樹海の大樹や風の渓谷の塔に比べれば劣るとはいえ、間近で見ると圧巻である。
その大きさに見合ったサイズの様々なオーナメントで飾りだてられたその木に、二人はしばし無言で見入っていた。
「……そろそろ目的を果たしに行こうか」
「そうですね。あまりケーキが遅くなると、皆さんに申し訳ないですし」
街の南西にある雑貨屋ヒナギクの前では寒そうなサンタ衣装に身を包んだ売り子が必死に作った営業スマイルを浮かべて背後に山積みにされたケーキの箱を売り込んでいた。
「珍しいですね。レイジさんが可愛い娘を見て何の反応も示さないなんて」
店内に入るや、そんなことを言い出した。
「今日ぐらいは目移りしないさ」
「……それって、明日からはいつも通りってことですか?」
「いや……それは……」
「ふふっ、冗談です」
店でケーキを受け取り、外へ出ると雪がぱらつきだした。
「ホワイトクリスマスだな」
「懐かしいですね……雪……」
世界の壁を越え、奇跡の再会を果たしたあの日。
思えばあの日も雪が降っていた。
二人にとって雪は別れと再会の象徴である。
「サヤ……」
「はい?」
「少し目を瞑っててくれないか?」
「いいですけど」
レイジの意図を掴めないながらもサヤは素直に指示に従った。
「いいよ」
「レイジさん……いったい何を……」
「下を見てごらん」
「下?……あ!」
レイジに言われるまま下を見たサヤの目が大きく開いた。
そこには雪の結晶を模したシルバーのネックレスが光っていた。
レイジがこの日の為にアークシティのアクセサリーショップで購入したものだ。
「結構の値の張る代物だったけど、ここ最近各地で魔獣を倒して稼いだお陰でどうにか買う事が出来たよ」
「これを買うために最近出かけてたんですね……」
「気に入ってもらえたかな?俺のクリスマスプレゼント」
「勿論です!それに、最初のクリスマスプレゼントがレイジさんからで本当に良かったです!!」
「そう言ってくれると、頑張った甲斐があるよ」
探偵事務所に帰る頃には雪は本降りになり、家路を急ぐ人々の姿も多く見かけるようになった。
「ただいまー……あれ?」
服に着いた雪を払いながら、レイジは怪訝な声を上げた。
ケーキを待っているはずのクウヤ達6人の姿はどこにもなく、無人の屋内を来客用のガラステーブルの上に置かれた家庭用小型ツリーの灯りだけが照らしていた。
「皆さんどこへ行かれたんでしょう?」
自分達にサプライズでも仕掛けようと隠れているのかと思ったが、電気をつけても誰一人出てこず、1階のどこを探してもクウヤ達の姿は見当たらなかった。
「おかしいな……みんなどこ行っちゃったんだろう?」
2階へ上がっても、同じであった。
しかし食事用テーブルの上に出かける時には無かった筈の小箱とICレコーダー、ラップに包まれた料理とキャンドルが置かれていた。
「なんだろうこの箱……」
白い雪の結晶の模様が描かれた箱の蓋をレイジが開けると、精巧に作られた銀の人形が5つせり上がり、クリスマスソングを奏で始めた。
「これは……オルゴールか……」
「いい音色ですね……」
人形は全て女性を象っており、手には楽譜らしきものを持っている。
ルミナスタウンの聖歌隊がモデルだろうか?
「真ん中の……ルナさんにそっくりですね」
「言われてみれば確かに……」
ショートの髪、頭頂部のγ(ガンマ)の字にも似たくせっ毛、豊満な胸……全てルナと一致していた。
曲が終わると自動的に人形が下がっていき、蓋も閉じた。
「こっちのレコーダーは何でしょうか?」
サヤがおもむろにレコーダーを手に取り、再生ボタンを押す。
「メリークリスマス!レイジ!サヤ!」
聞き慣れたカレンの声がレコーダーから響いた。
「にっひっひ。どう?驚いた?」
「そこの箱はお兄ちゃんとサヤさんのためにみんなでお金を出し合って……」
「ルミナスタウンに住んでる私の知り合いの技師に特注した二人へのプレゼントよ」
「とんでもなく値が張ったけどな」
「サヤ、この兄と皆からの贈り物。気に入ってくれると幸いだ」
「私達はルミナスタウンのルナの家で楽しむとするわ。そこにいたら熱くて熱中症になっちゃいそうだし」
カレン、レミ、ルナ、クウヤ、カイ、リナの順番でそれぞれの声が思い思いのメッセージを紡ぐ。
「本当はクリスマスキャンドルは着けていこうかと思ったんだが、万一事務所が火事になると困るんでな。すまんがセルフで勘弁してくれ」
このクウヤの言葉で、キャンドルの傍に安物のライターが置かれていることに気づいた。
「まったく……粋なことをしてくれるよ」
そう零したレイジがライターを取ろうとすると足に何かが当たり、紙がクシャッとなる音が鳴った。
足元を見るとリボンが巻かれた紙袋が置かれていた。
「なんだこれ?」
袋を開けると、そこにはかつて戦いの中で手に入れたヤドリギの名を持つ銃が入っていた。
「にひひっ!ここからは私だけのサプライズ!」
止めるのを忘れていたICレコーダーから突如カレンの声が発せられた。
「足元にある袋はみんなには内緒で二人に用意しておいたのよ。ヤドリギの代わりに使ってね。言っとくけど貸しただけだからね。明日にはちゃんと返してよね。約束よ?」
そこでピー、と電子音が鳴り、今度こそ音声は途切れた事を告げた。
「……ヤドリギの代わりってどういう事でしょう?レイジさん、わかりますか?」
「ヤドリギの下でキスをすると永遠に愛が続くっていう伝説があるんだよ」
刹那、サヤがぼんっと顔を真っ赤にした。
「ま、まったくカレンの奴……気が利くんだかおせっかいなんだかわからないな……」
「そ、そうですね……」
ケーキの箱を開け、中身を取り出した。
中央には『Merry Christmas』と記されたチョコのプレートと砂糖菓子の人形が2つ配置されていた。
かなりデフォルメされてはいたが、その姿形は紛れもなく……
「これは……私とレイジさん……ですか?」
「写真を見せればそれをモデルにした飾りを作ってくれるサービスがあったからやってもらったんだ。追加料金が発生したけど」
その後ライターで灯したキャンドルの明かりが照らす中、再びオルゴールに一曲奏でてもらいながら二人きりのクリスマスディナーを満喫した。
ケーキは元々8人で切り分けることを想定したサイズだったので、半分以上を残すことになり冷蔵庫で保管することになった。
プレートと2つの砂糖菓子はしっかり腹に収めたが。
「ふぅ……お腹いっぱいです……」
「サヤ、今日はよく食べたな」
「だ、だって美味しかったんですもの……」
顔をほのかに染めつつ、口をとがらせながら言う。
想い人のそんな愛らしい様にレイジの口元が緩んだ。
「レミがいつも以上に腕を振るってくれたんだろうな。帰ってきたらよくお礼を言わなくちゃな」
「そうですね……レイジさん?」
不意に顔を近づけてきた最愛の男に怪訝な声を漏らすサヤ。
「その……甘いキスがしたくなったもので……」
「もう……」
その行動の理由に照れながら嘆息すると……
「部屋で待っていてくれませんか?少し準備しますので」
自室へ持ってきたキャンドルの明かりの中、レイジはサヤの不可解な要求に訝りつつもベッドに腰を掛け、彼女を待った。
「お待たせしました、レイジさん」
「サヤ、一体どうし……」
声に反応し、入口の方を向いたレイジは言葉を失った。
縁に雪のように白くふわふわの毛を持つ布面積の少ない水着に身を包んだ想い人の姿を目の当たりにしたからだ。
サンタビキニを着用したサヤは右手に白いビニール袋を持っていた。
ちょうどサンタの担いでいるプレゼントの袋のように。
「サ、サヤ!?その恰好は!!?」
「……レイジさんもよく行ってるオトナのお店で買ったんです」
「え……!?あの店に入ったのか!!?」
サヤが絶対に足を踏み入れないであろう場所に行っていたという事実に驚愕するレイジ。
「前々から気になって……入ってみたら……その……」
「そ、そうか……」
「そして……」
サヤは言葉を切り、ビニール袋から何かの小瓶を取り出し、中身を一気に飲み干した。
するといつかのようにみるみるサヤの乳房が膨らんでいった。
ビキニの胸紐が今にもはち切れそうな程に伸びるが、かなり丈夫な素材で出来ているようでその心配はなさそうだ。
切れたら切れたでレイジにとってはおいしいシチュエーションなのだが。
「それ……もしかして豊胸剤?」
「レイジさんは大きいのがお好きなんですよね?これは私からのクリスマスプレゼントです」
そう言って、サヤはビニール袋を枕元に置いた後2つの大きな膨らみをレイジの胸へと押し付けた。
「今日はレイジさんの喜ぶこと……たくさんしようって決めてたんです」
「サヤ……俺の為にこんな寒そうな格好を……」
「レイジさんの為なら、寒さなんて平気です。それに……」
そこで再び言葉を切り
「これから一杯……温かくしてくれますよね?」
照れ交じりのその発言を聞くや否や、レイジは飛びつくようにキスをした。
ケーキの甘い味がする、この聖なる夜ならではのキスを。
「んむ……ちゅ……」
「あむ……レイジ……さん……」
同時に彼女を強く抱き寄せ、その膨らみの感触も堪能する。
二人の舌と唾液が交じり合うまで、そう時は要しなかった。
やがて苦しくなると最初のキスの時と同様、銀の糸を引きながら口を離す。
「……来年はチョコレートケーキを買って、チョコ味のキスをしてみないか?」
「ふふふ……もう、レイジさんったら……気が早すぎますよ。その案には賛成しますけど」
もう一度唇を重ね、舌と唾液を絡ませる。
そのままサヤを下にしてベッドの上へなだれ込む。
「あ!レイジさん……」
サヤが止める間もなく、レイジはブラに当たる部分をずらし、膨らんだ乳房を露にする。
そして最愛の女性からのクリスマスプレゼントにキスをする。
顔面でその柔らかさを味わうのも忘れてはいない。
「もう……そんなところに……」
「せっかくのサヤからのプレゼントなんだ。存分に味わわなきゃ。みんなには気づかれない位置にしておくからさ」
サヤの抗議を無視して、次々と柔らかな双丘に唇の刻印がなされる。
深い谷間には贈られたばかりのネックレスが静かに煌めいていた。
「レイジさん……胸もいいですけど……そろそろ……」
起き上がって枕元からビニール袋から別の小瓶とストローの紙包みを取り出し、紙包みをレイジに渡す。
「その瓶は?」
「真・馬並みドリンクだそうです。このビキニを買ったとき、おまけしてもらいました」
ラベルの効能書きによると以前使ったサウザンド程ではないが、精力を増進させる効果があるらしい。
「これを……こうして……」
蓋を開け、大きな胸の谷間に挟むサヤ。
「この状態で飲んでくれませんか?」
レイジから細長い紙包みを取り、中身を取り出して瓶に刺す。
(これ……結構興奮するな……)
言われるまま、レイジはジュース感覚で中身を吸っていった。
豊満な乳房が若干顔に当たっていた。
想い人からの思わぬ趣向を堪能していると、程なく元々勃起していたレイジのペニスが更にムクムクと膨らんでいった。
普段よりは大きいが、過去の馬並みドリンクシリーズを服用したときに比べるとだいぶ小さい。
「その大きさなら私の中に入れても大丈夫そうですね」
「サヤ……実は結構この状況を楽しんでないか?」
「ダメ……ですか?」
「まさか」
そう言ってレイジはサヤの股間にゆっくりと勃起を収める。
そして大きな双丘に両手を付いて鷲掴みにする。
「やっぱり大きいおっぱいは手で掴むに限るなぁ」
「もう……レイジさんたら……」
「安心して。こっちの方もしっかりとやるから」
言葉通りレイジは腰を動かし、サヤの膣内を抉りだした。
「あんっ!今日のっ……レイジさんっ……いつもよりっ!!」
「ドリンクのお陰もあるけど……今日は気持ちが最高に高ぶってるからなぁ……」
「わ、私も……で、でも……こんなの……気持ちよすぎて……私……」
「そうだな……今日のサヤいつもより吸い付きがいいから……早く……終わりそうだ」
狭い部屋に喘ぎと水音が響く。
「レイジさんの……おちんちんがぁ……私の子宮の入り口と……キスしてますぅ……」
「随分エッチな言い回しをするじゃないか……そんなサヤには……ご褒美をあげよう」
そう告げて、レイジは彼女の乳首に顔を寄せ口づけをする。
「やぁん……レイジさんたらぁ……!!」
サヤが艶やかな抗議の声を上げるが、レイジは更に乳首を口に含みコリコリとした感触を味わいだした。
サヤが買ってきた品の効果だけでなく、今日というこの日がもたらす独特な雰囲気が情事をより熱く、より激しく、より上質なものへと昇華させていった。
間もなく二人は本能的に情事の終わりを悟った。
「はぁん、レイジさ……私……もう……」
「俺も……もうすぐ……イきそうだ……!!」
「だ……出してくださいっ!!レイジさんのっ!!私の中にっ!!」
「ああ。言われなくても……サヤの為にもな!!」
いつか自分の子供を見たいというサヤの願いが叶うよう思いを込めて精を解放した。
無論、それは彼自身の願いでもある。
白濁の放出が終わると同時にレイジの逸物が元の大きさに戻ったが、彼の昂ぶりはまだ収まり切ってはいなかった。
「はぁ……はぁ……まだ……物足りないようですね?」
「うん……」
「いいですよ……レイジさんがしたいのなら……でも……」
言いながら、サヤが枕元に置いたビニール袋に手を伸ばす。
「レイジさん……実はもう1つプレゼントがあるんです」
ビニール袋から雪のように白く、長く、そして柔らかなものが姿を現した。
「これは……マフラー?」
「はい……こういうのは初めてだったんですけど、レミさんに手伝ってもらって作ったんです」
「ありがとう」
レイジは受け取ったマフラーを早速巻いてみた。
刹那、サヤに抱きしめられているような錯覚を覚えた。
「とってもあったかいよ」
「気に入ってもらえて、嬉しいです」
サヤが今日の中で、一番満足げな笑みを浮かべた。
「……なんだかもらってばかりで悪いな」
「いいんです。私にとってはレイジさんが一緒にクリスマスを過ごしてくれる、その事に勝るクリスマスプレゼントなんてありませんから」
「はは……こりゃ参ったな」
レイジが照れながら右手を後頭部にやると不意にサヤが抱き着いてきた。
「もう一度キス……してくれませんか?」
「じゃあせっかくだから、こいつの下でするか」
レイジはカレンからの借り物……ヤドリギの名を持つ銃を右手で高く持ち上げつつ、覆いかぶさるように唇を重ねた。
もう二度と離れることが無いように、言い伝え通り永遠に愛が続くよう願いを込めて。
「さっき、最初のクリスマスプレゼントがレイジさんからで本当に良かったって言いましたけど……それと同時に最初にプレゼントを贈る相手がレイジさんで本当に良かったとも思ってますよ」
「サヤにそんな風に想ってもらえること……俺にとってはそれが最高のプレゼントだよ」
「ふふっ、愛してます。レイジさん」
「愛してるよサヤ。メリークリスマス」
再びピストンを開始され、喘ぎと水音が響きだした。
こうして二人が結ばれてから最初に迎えたクリスマスは閉幕となるのであった。
なお余ったケーキは翌日に帰ってきた6人の胃に無事収まったことを記しておく。